北朝鮮当局は、抑留している米市民3人全員を解放する方針を決めたと北朝鮮関係筋が明らかにした。6月初めまでに開かれる見通しの米朝首脳会談で、トランプ米大統領が訪朝した場合に引き渡すという。20日に決めた核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射中止に米市民の解放を加え、米朝会談での主導権を握りたい考えだ。
正恩氏、米朝会談の主導権握る狙いか 核実験場廃棄宣言
北朝鮮には現在、平壌科学技術大学に勤めていたキム・ハクソン氏ら米市民3人が、敵対行為などの理由で拘束されている。昨年6月に米大学生オットー・ワームビア氏の解放に応じて以降、北朝鮮は3人との領事面会を拒んでいる。ワームビア氏は、昨年6月に米国に帰国して間もなく死亡した。
同筋によれば、北朝鮮は4月上旬までに訪朝したポンペオ米中央情報局(CIA)長官と米市民の解放問題について協議した。同筋は「いつでも解放できる。トランプ訪朝に合わせた政治ショーのカードだ」と語った。北朝鮮がポンペオ氏に解放の意思を伝えたかどうかは確認されていない。
米国は北朝鮮に独自制裁を科す大きな理由として、核・ミサイル開発とともに人道問題を挙げてきた。
米国と北朝鮮は現在、米朝首脳会談の合意をめぐって協議を続けている。米国は合意に具体的な非核化の措置を盛り込む一方で、見返り措置を記すことには応じられない立場。北朝鮮は、非核化では原則的な合意にとどめ、見返り措置を盛り込むよう主張しており、溝は埋まっていない。(ソウル=牧野愛博)