ソフトバンク・内川聖一
(1日・プロ野球 ソフトバンク3―1ロッテ)
吹っ切れたかのような一振りだった。四回無死。ソフトバンクの内川が高めに浮いた142キロを振り抜く。今季初の2戦連発となる2号ソロが、ライナーで左翼席に飛び込んだ。リードを広げる一発は、この試合の2安打目。2千安打まで残り4本に迫った。
この本塁打には続きがあった。内川がベンチに戻ると、特別な祝福で出迎えられる。ベテラン川島の発案で、何事もなかったようにチームメートがグラウンドを見つめていたが、内川が座ったのを合図に歓喜の輪ができた。大リーグで初本塁打を打ったエンゼルス・大谷が受けた祝福の儀式「サイレント・トリートメント」と同じ光景だ。
チームの勝利を最優先する主将だから、2千安打については「個人のことを早く終わらせてチームの日本一に向かいたい」と繰り返す。だが、その思いが重圧にもなった。「意識しないつもりでスタートしたが、過剰に意識した」
打率は前日まで2割1分台。ミリ単位の感覚の誤差を埋めようと、前日は右手の打撃用手袋を外して打席に臨み、開幕23試合目で今季1号を生み出した。勢いそのままに、この日の第1打席は中前へ。第2打席は、前日の一発とほぼ同じコースをさばいた。
「開幕からチームメートに謝ってばかりだった。一日でも早く打って、すっきりして喜んでもらいたい」と内川。カウントダウンの高揚感をかみしめつつ、大記録まで一気に駆け抜ける。(甲斐弘史)