児童が通学路を歩いて作った津波避難マップ。太田勝久校長は「歩くことで、津波の危険を自分の問題として考えることが出来る」と話す=2018年5月2日午後2時49分、静岡市の市立中島小、峯俊一平撮影
84人が犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校の津波訴訟は、他の学校現場にも課題を突きつける。防災について学校に高度な判断と知識を求める控訴審判決に対し、石巻市は上告方針だが、一方で、子どもの命を守る「事前防災」の取り組みは各地で模索される。
大川小の津波訴訟、石巻市が上告方針 臨時議会を招集
控訴審判決が求めたように、自分なら津波の浸水想定区域外だった大川小で対策を取れたか――。震災当時、宮城県沿岸部の小学校長だった60代の男性は自問するが、答えは出ない。「学校現場に厳しい判決だが、たくさんの命が失われた現実は重い」
沿岸部では地域によっては、津波から逃げられる建物が学校しかない学区もある。宮城県内の沿岸自治体の教育委員会の担当者は「裁判の行方がどうなろうと、地域住民と連携して学校防災に取り組めるよう支援していきたい」と話す。
駿河湾から約700メートル。津波の浸水想定区域にある静岡市立中島小の太田勝久校長(59)は裁判を通じ、「子どもの安全を常に考え続ける姿勢が求められていると感じた」と話す。
昨年度から近くの中島中と地域をあげて防災教育に取り組む。東北の被災地を知るため、昨年7月に生徒・児童らと計19人で大川小を訪問。現場に立つと「意外に山が近い」と感じる一方、多くの児童が犠牲になった現実を考えると、太田校長は「判断の厳しさを強く感じた」と振り返る。
中島小の校長室には静岡市が作…