書類送検時の朝日新聞紙面での呼称の例
人気アイドルグループ「TOKIO」のメンバーだった山口達也さん(46)が強制わいせつの疑いで書類送検され、不起訴(起訴猶予)になった問題では、報道を巡って様々な議論が起きた。多くの報道機関が使った「メンバー」という呼称に、違和感を感じたという意見も。被害者との関係を詳しく報じた社もあり、被害者保護の観点から課題を指摘する声も出ている。
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警視庁が山口さんを書類送検したことが発覚してから不起訴になるまでの間、朝日新聞を含め、多くの新聞やテレビのニュースが、山口さんについて「山口達也メンバー」という呼び方を使った。読売新聞は「容疑者」とした。不起訴になった後は、多くの社が「さん」付けになった。
朝日新聞には「なんで『容疑者』じゃなくて『メンバー』なのか?」といった疑問の声が寄せられた。
朝日新聞ではかつて、刑事事件の容疑者を原則として呼び捨てで報道していたが、人権への配慮から1989年、逮捕された人を原則として「容疑者」と呼ぶ方針に変わった。書類送検の場合は、事件事故の報道の際の表記のガイドラインに基づき、事案の軽重や当事者の属性などを踏まえて実名か匿名か、どのような呼称にするかを個別に判断することとしている。
今回もこうした考え方に沿って実名、肩書呼称で表記することとした。一般的な肩書に該当するものがなく、「メンバー」を用いた。
2004年、当時タレントの男性が所属事務所の社員を殴ってけがをさせたとして傷害容疑で書類送検(その後、罰金30万円の略式命令)された事件では、書類送検の段階で「容疑者」として報じた。17年8月、プロ野球選手が警備員にけがをさせたとして傷害と器物損壊容疑で書類送検(その後、不起訴)された事件では、「投手」。同年10月、前衆院議員が元秘書に暴行した疑いで書類送検(その後、不起訴)された事件では「前衆院議員」の肩書で報じた。匿名や「さん」付けで報じたケースもある。
今回、「容疑者」とした読売新聞グループ本社広報部は「事案の内容や捜査当局の送検時の意見などを踏まえ、社内の基準に沿って判断しました」としている。
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