阪神の原口文仁
(15日・プロ野球 阪神2―1DeNA)
折られたバットが粉々になって飛び散った。六回2死満塁。それでも阪神の代打・原口の打球は死んでいなかった。三塁手の頭上をふわりと越え、左翼線を転がる。本人も認める「きれいではないヒット」が、2点適時二塁打になり、チームの連敗を4で止めた。
ピンチを迎え、相手は左腕のエスコバーにスイッチ。控え捕手ながら、右の代打の比重が高い原口に出番が巡ってきた。1球目は144キロ直球を空振り。1球も無駄にしないのが代打の鉄則なら、「しっかり振れた。手が出せた」のはマイナスではなかった。打ったのは3球目。148キロの内角直球に力負けはしたが、振り切った結果だ。
一昨年、育成選手から支配下登録され、「打てる捕手」としてブレーク。だが、他球団に右肩の不安が知れ渡ると、昨季は金本監督の命で一塁手に転向した。期待されたほど打てず、昨秋に志願して捕手に戻った。首脳陣の構想に逆らう形になり、チャンスが少なくなるのは覚悟の上だった。実際、キャンプ時点での評価は高くなかった。
今季のチームは貧打に苦しむが、そこに原口の居場所が生まれる。捕手で先発も4試合。期待されるのはあくまで打撃で、4月30日の広島戦では七回途中に「救援捕手」の梅野と交代させられたこともあった。
捕手にしては打てる。それが原口の生きる道。今のところ、昨秋の決断は正しかったといえるだろう。(伊藤雅哉)