デトロイト市南部の崩れかけた空き家。周囲の空き家は取り壊されて空き地になっている=2月、大津智義撮影
負動産時代
米国中西部に広がるラストベルト(さび付いた工業地帯)。街の衰退とともに、放置された空き家や空き地が増え、治安悪化の一因にもなっている。こうした「負動産」を公的機関がいったん引き取り、まちづくりのビジョンに沿って近隣住民に払い下げたり、あえて開発を抑制したりする動きが始まっている。
米デトロイトで負動産に立ち向かう男 NPOで30年
シリーズ「負動産時代」
かつて自動車の町として繁栄した米国・デトロイト市。1950年代に180万人を超えていた人口は、産業の空洞化に伴って急減し、70万人を割った。ラストベルトを代表する都市の一つだ。街には朽ちかけた空き家が点在し、「差し押さえ」を通告する紙が貼られた家も。
市北西部のブライトムア地区も、住民の流出と街の荒廃が進む。だがその一画で、長年放置された空き家を解体し、都市農園などとして再活用する動きが広がりつつある。
ブリタニー・ブラッドさん(26)は4年前、長く放置されていた9区画を、市の外郭機関である「デトロイト・ランドバンク」から購入。不法投棄されていた車の部品やマットレスなどを2年がかりで撤去し、仲間とともに野菜などを栽培する農園に再生させた。
ランドバンクは、放置された空き家や空き地をいったん所有し、空き家を解体したり改修したりして、再利用可能な状態にすることを目指す公的機関だ。放置空き家などと隣接する土地の所有者であれば、1区画100ドル(約1万円)と格安で払い下げる仕組みがあり、ブラッドさんのケースも9区画をまとめて払い下げた。
ブラッドさんは「周囲に農園やポケットパークが増えた。ランドバンクから格安で手に入れた土地を、それぞれ好きなように使っているから」と話す。
ブラッドさんが土地を所有する…