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名古屋・興正寺前住職と総本山が和解 土地売却問題

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記者会見する添田隆昭宗務総長=2018年5月21日午後1時3分、名古屋市昭和区の興正寺、申知仁撮影


高野山真言宗の別格本山・八事山興正寺(名古屋市昭和区)の前住職(70)側と総本山側が、寺の土地の無断売却を発端に対立していた問題で、総本山は21日、罷免(ひめん)した前住職が寺を明け渡し、双方が裁判外で和解した、と発表した。尾張徳川家ゆかりの古刹(こさつ)を舞台に、4年以上続いた対立は解消する見通しだ。


対立の発端は、前住職らが2012年7月、興正寺の土地約6万6千平方メートルを、中京大学に約138億円で売却したことだった。総本山側は、無断で土地を売却したなどとして、前住職を罷免。さらに、前住職らが売却代金のうち約70億円を外部に流出させたとして、背任と業務上横領の疑いで名古屋地検に告訴状を提出。特捜部が捜査していた。


総本山の添田隆昭・宗務総長は21日、特任住職となって初めて入った興正寺で記者会見した。添田氏によると、前住職らは同日、罷免後も運営を続けてきた興正寺から退去。「裁判を長引かせるのは本意じゃない」などと説明があったという。


寺の土地売却に絡んで、前住職が約70億円を外部に流出させたとする問題について、添田氏は「(流出の妥当性を確認する)労力は興正寺の再建に向かわせるべきだ」と説明。「(前住職は)退去で責任は取られたと考えている」と述べ、これ以上の責任は不問にする考えを強調した。


寺の明け渡しなどを巡っては双方が係争中で、25日に名古屋地裁で判決が言い渡される予定だ。総本山側は訴えを取り下げる意向で、手続きが間に合わない場合は判決の延期を求める。名古屋地検に総本山側が提出した告訴状についても取り下げの方針という。


興正寺の檀信徒の男性(70)は「(70億円の金の)使途が一番大事なところ。皆さん不満が残るだろうし、今まで何だったんだという話だ」と憤った。(仲程雄平)


70億円流出 立件困難


総本山側が名古屋地検に提出した告訴状を取り下げる考えを示したことで、刑事事件としての立件は困難になるとみられる。


特捜部は昨年9月、背任容疑で寺などを捜索している。ある地検幹部は「(70億円を流出させられたという)被害者が処罰を求めないというのであれば、捜査に支障がないとは言えない」と話した。


総本山側と前住職側の対立の経緯


2006年3月 前住職が興正寺住職に就任


12年7月 興正寺の土地を中京大学に約138億円で売却


14年1月 総本山が前住職を罷免


4月 総本山が後任住職の派遣を決定


15年1~2月 前住職側が住職の地位確認などを求めて名古屋地裁に提訴


5月 総本山側が興正寺の明け渡しを求めて名古屋地裁に提訴


10月 総本山側と前住職側が面談。和解は「不調」で終わる


11月 総本山が興正寺の真向かいにプレハブの「本堂」建設


16年9月 総本山側が背任と業務上横領容疑で名古屋地検に告訴状を提出


17年9月 名古屋地検特捜部が興正寺などを捜索


18年5月21日 双方が和解し、前住職らが寺から退去



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