コーヒー豆の焙煎(ばいせん)をする舟橋和孝さん=名古屋市西区那古野1丁目 名古屋市西区の円頓寺商店街で85年続く「喫茶まつば」が昨年暮れ、リニューアルオープンし、脱サラした舟橋和孝さん(50)が3代目として店主を継いだ。「なごやめし」として人気の小倉トースト発祥の店から受け継いだ伝統の味もそのまま守っている。 れんがと木のぬくもりが調和した店内は、どこか懐かしさを感じる。店の前にはオープンテラスが新たに設けられ、コーヒー豆を焙煎(ばいせん)する様子を眺めることができる。 「まつば」は1933年、和孝さんの祖父、照一さん(故人)が始めた。「なごやめし」の一つ、小倉トースト発祥の店とされる「満(ま)つ葉」で10年間修業し、のれん分けの形で独立した。当時から自家焙煎した豆で入れたブレンドコーヒーにこだわり、常連客の憩いの場として愛され続けてきた。 和孝さんは大学卒業後、名古屋市内のコーヒー卸会社へ就職した。サラリーマンとして直営の喫茶店で店長を務め、豆の焙煎技術も身につけた。 「外から見ることも大事だと思い、10年ぐらい勤めたら店を継ぐつもりだった」 しかし、結婚して家庭を持ち、仕事も忙しかったこともあり、なかなか踏ん切りがつかなかった。バブル経済が崩壊し、店の目の前にあった映画館や美容院などが姿を消すなど、円頓寺商店街から活気が失われていたことも決断を鈍らせた。 「地域の憩いの場」守る覚悟 「もうだめかも」とあきらめた時もあったが、ここ数年、商店街に新しい店が進出してきた。息を吹き返しつつあることを目の当たりにして心が動いた。2年前、「外から来た人が商店街を盛り上げているのに、地元で育った自分が頑張らなければ」と、店を継ぐ覚悟を決めた。 店を切り盛りしてきた2代目で父の亨さん(80)と母の多美子さん(75)も年を重ね、両親が元気なうちに店を引き継ぐなら今しかなかった。息子の決断に多美子さんは「本人がやる気になってくれてうれしかった」と喜ぶ。 看板メニューのコーヒーは、和孝さんの経験と知識を元にマイルドな味に変えた。すっきりとした苦みが癖になる自信作だ。さらに豆の味が楽しめるストレートコーヒーも常時4種類を用意する。伝統の小倉トーストのほか、ケーキなどのメニューも充実させた。 「街の喫茶店というコンセプトはそのままです。これからも地域の憩いの場であり続けたい」(松永佳伸) |
脱サラして守る味 創業85年の名古屋の喫茶まつば
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