読経する熊谷住職。後方の香炉には、震災後にたいたお香の灰が積み重なる=4月26日朝、岩手県陸前高田市、福留庸友撮影
僧侶たちが、東日本大震災の被災地で傷ついた人たちの心に寄り添い続けている。宗教者として何ができるのか、自問しながら歩んでいる。津波で多くの人が亡くなった岩手県陸前高田市で、出会った3人の姿を追った。
杉の巨木が参道に立ち並ぶ曹洞宗の普門寺。午前5時半、本堂に経を読む声が響く。「東日本大震災行方不明者、身元不明者、おのおの早く遺族の元に帰らんことを」。熊谷光洋(こうよう)住職(64)は朝課(ちょうか)で震災の犠牲者を供養する。
2011年5月の早朝、仙台から中年夫婦が訪ねてきた。「お勤めに参加させてください」。陸前高田で子どもを亡くしたという。だが、熊谷住職は断った。当時は朝課をしておらず、寺で寝泊まりするボランティアを起こしたくなかった。葬儀の相談が絶えなかった時期でもあった。
だが、夫婦が去った後、胸にざわつきを覚えた。よほどの気持ちがなければこの時間に仙台から訪ねてこないだろう。自分は何という態度を取ってしまったのか。激しく後悔した。