社会保障の費用の将来推計
65歳以上の高齢者数がほぼピークを迎える2040年度に、社会保障給付費は188兆2千億~190兆円となるとの推計を、政府が21日の経済財政諮問会議で公表した。高齢者の医療や介護、年金にかかる費用が増えるため、18年度の約1・6倍になる。社会保障を誰がどう支えるのか。推計を踏まえ、負担増や給付カットに向き合う議論が求められる。
社会保障給付費は医療や介護、年金、保育などの制度に基づき支払われた費用。財源は主に税と社会保険料で、自己負担分は含まれない。
40年度の推計を出したのは、今回が初めて。年金は18年度の1・3倍、医療費は1・7倍、介護費は2・4倍と介護費が大きく伸びる。また、税負担は79兆5千億~80兆3千億円と18年度の1・7倍、保険料負担は106兆1千億~107兆円と1・5倍に膨らむ見通し。国内総生産(GDP)に対する給付費の比率は18年度の21・5%から23・8~24・0%になるとした。推計にあたっては、経済成長率を年2%前後に置き、過剰な病床の削減や在宅ケアの重視、後発医薬品の普及など、医療や介護の計画が予定通り25年までに進むとした。
前回の推計は12年。民主党政権(当時)が「税と社会保障の一体改革」の中で、団塊世代(1947~49年生まれ)が全員75歳以上となる25年までを推計し、目指す社会保障の姿とかかる費用を示した上で、消費税を10%に引き上げることも決めた。
40年には高齢化率が35・3%と、今より7ポイント上がる見通しだ。高齢者入りする団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)と団塊世代の人数の多さを反映し、高齢者数は3920万人とほぼピークを迎える。関係者の間では「2040年問題」として以前から認識されていた。
今回の推計は、3月29日の諮問会議で民間議員から「40年ごろに高齢者数がピークを迎える。給付と負担の構造について情報共有が必要」との要請があったことを受けて公表された。
今後は給付費をどうまかなうか、その前提として制度をどうするかが問われる。ただ、これまで安倍政権は10%への消費税引き上げを2度延期しており、負担増をめぐる議論は政府内で本格化していない。
医療や介護の担い手不足も深刻だ。18年度の従事者数は全就業者数の13%にあたる823万人だが、推計では40年度には全就業者の19%、1065万人が必要だとしている。厚生労働省の担当者は「健康寿命を延ばし、高齢者にも医療や介護の支え手になってもらう必要がある」と話す。(西村圭史)