小説家のフィリップ・ロスさん。1993年撮影=AP
現代米国文学を代表する小説家フィリップ・ロスさんが22日死去した。85歳。米メディアが伝えた。
1933年、米国ニュージャージー州でユダヤ系アメリカ人として生まれた。移民の家庭に育った生い立ちを作品に投影し、長編「素晴らしいアメリカ野球」などで、社会の繁栄の裏にある腐敗や矛盾を鋭い批評眼と大胆な想像力で描き出してきた。
階級の異なる若者の恋を描いたデビュー作「さようならコロンバス」(59年)で全米図書賞を受け、一躍脚光を浴びた。厳格なユダヤ人家庭で育った主人公の屈折をつづる「ポートノイの不満」(69年)はベストセラーに。70年代には風刺色の強い「乳房になった男」など話題作を次々に発表した。
「背信の日々」(86年)「父の遺産」(91年)で2度の全米批評家協会賞、98年にピュリツァー賞。「ヒューマン・ステイン」(2000年)などで3度、ペン/フォークナー賞を受けた。01年には第1回フランツ・カフカ賞を受賞した。ほかにも、不倫する作家を主人公にした「いつわり」(90年)、老いた男の性への執着を描いた「ダイング・アニマル」(01年)などが邦訳されてきた。
12年、フランス誌の取材に対して引退の意思を表明したと報じられた。長年ノーベル文学賞の候補に名前があがり、トマス・ピンチョンさんやドン・デリーロさんらと並ぶ、米国で最も偉大な作家の1人だった。