党首討論で質問する日本維新の会の片山虎之助共同代表=30日午後3時44分、国会内、岩下毅撮影
国会の党首討論が30日午後、約1年半ぶりに行われた。安倍晋三首相に対し、立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎共同代表、共産党の志位和夫委員長、日本維新の会の片山虎之助共同代表が順に、1対1の討論を挑んだ。主なやりとりは次の通り。
森友巡る辞任条件、首相「新しい定義でない」 党首討論
特集 森友学園問題
政治タイムライン
枝野氏「急に贈収賄のような限定、ひきょうな行為」
【立憲・枝野幸男代表】(森友学園問題について)昨年2月の衆院予算委員会で「私や妻が関係したということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員もやめる」と言った。ところが、月曜日(28日)の予算委では、贈収賄に当たらないから問題がないと聞こえる発言があった。贈収賄などに該当すれば総理や国会議員を辞めるのは当たり前だ。急に贈収賄のような限定を付(ふ)したとすれば、ひきょうな行為だ。
【安倍晋三首相】昨年3月24日に同じ趣旨の答弁をしている。その後、今年の2月28日、3月28日、4月11日にも同趣旨の答えをしており、急に私が新しい定義を定めたわけでない。
【枝野氏】金品の流れがあったかどうか、それがこの問題の本質か。総理の昭恵夫人は私人だ。その私人が、(夫人付の)公務員を通じて、優遇を受けられないかと問い合わせた。優遇を受けられるなら受けたいと、働きかけにほかならない。それは良いことだと思っているのか。
【首相】 確かにそれは、こういう制度的な問い合わせに対しては、私の個人事務所からお答えする方が良かったかもしれないと思う。
【枝野氏】 総理夫人がこの問題にコミットして(関わって)いて、しかも優遇を受けられることを希望しているのではないかと、全財務省が知りうる状況にある中で、あの異例の値引きが行われた。そこに影響を与えていなかったという立証責任はそちらにある。
加計問題について。愛媛県文書にある、2015年2月25日に加計(孝太郎)理事長が総理と面談したという記述について、加計学園はファクス1枚で、それは虚偽、間違いだったと発表した。これが本当だったら、総理のお友だちが理事長をしている学校が、総理の名前を勝手に使って物事を都合よく進めるために利用した。安倍さん個人は怒らなくても結構だが、内閣総理大臣としてはしっかり説明してもらわなきゃ困ると言わなければおかしい。
【首相】 民間の学園が既にコメントを出しており、政府としてそれに対してコメントする立場にない。大事なことは、プロセスが公正、公平であったかどうかということではないか。
玉木氏「少数派にも耳を傾け、丁寧な合意形成を」
【国民・玉木雄一郎共同代表】国会改革をぜひやりたい。国会で、様々な問題を解決していきたい。ですから、政府与党は出すべき資料は出し、呼ぶべき人は呼んでください。少数派の声にも耳を傾け、丁寧に合意を形成してください。信頼関係ができれば、私たちは審議拒否はしない。乱闘国会から決別して、熟議の国会を目指したい。
トランプ米大統領は、米国に輸入される自動車の関税を場合によっては今の10倍の25%にする方針を示した。もし実際に行われれば、日本経済、世界経済に大打撃だ。不条理で不公正な貿易ルールは認められない。事前に外交ルートを通じて連絡があったか。
【首相】米通商拡大法232条に関しての質問だと思う。鉄鋼の多くは日本しかできないものであり、代替が不可。同盟国の日本にこういうものを課すのは極めて理解しがたいし、受け入れることはできない。全ての貿易投資は、WTO(世界貿易機関)と整合性がなければならない。事前通告について詳細は話せない。
【玉木氏】甘く見ない方がいい。中国は対抗措置を打つだけではなく、WTOの紛争解決の手続きに従って協議を申し入れている。日本はWTOのセーフガード協定上の措置を講じるべきだ。米国に遠慮せず、世界の自由貿易体制を守るという意識で行動すべきだ。
【首相】 しっかりと戦略を持って対応している。
【玉木氏】日ロ交渉について。(北方四島での)共同経済活動ばかり見え、領土交渉が全く見えない。島を返した時に日米安保条約に基づいて米軍の施設や基地が置かれるのか置かれないのかが、(ロシアの)プーチン大統領の一番の懸念。島が返ってきた時、(米軍の)施設、基地を置かないとトランプ大統領から確約を取れば、日ロ交渉は一気に進展すると思う。
【首相】共同経済活動は、北方四島に住んでいる人たちにも、日本人と協力すれば利益を生む、自分たちの生活にも資すると思ってもらうためにやっている。平和条約交渉の中身は、最後の段階に至るまで外に出すわけにはいかない。
【玉木氏】いくら共同経済活動をやっても本質的な解決にはならない。経済的な支援の先食いを非常に懸念する。米朝首脳会談も米国にとってベストなシナリオだったとしても、日本にとって必ずしもベストではない。米国や韓国に頼むだけではなくて、日本は自立的、自主的な外交を示すべきだ。
志位氏「森友・加計、国民と国会を欺く五つの行為」
【共産・志位和夫委員長】森友・加計問題で、政府も認めた五つの重大な事実を指摘したい。森友疑惑で決裁文書を改ざんし、虚偽答弁で交渉記録を隠蔽(いんぺい)しようとし、交渉記録を実際に廃棄した。加計疑惑では、「総理のご意向」などと書かれた内部文書の隠蔽を図り、柳瀬(唯夫)元首相秘書官は今年5月に一変して加計関係者と3回にわたって首相官邸で会っていたと認めた。どれも国民と国会を欺く行為で、真相究明の重大な障害となった。なぜ、引き起こされたか。
【安倍晋三首相】森友問題は私の妻が名誉校長を引き受けていたこと、加計学園の獣医学部新設については私の友人が新設をしようとしていたことから、国民から疑念の目が向けられても当然だろうと思う。今後は「李下(りか)に冠を正さず」という気持ちで気を引き締めていきたい。決裁文書の書き換えと公文書の問題は、国民の信頼を揺るがす事態になっている責任を痛感しているし、最終的な責任は総理大臣たる私にある。うみを出し切り、組織を立て直したい。
【志位氏】全然、答えになっていない。もう1回答えてください。
【首相】この問題については、「言った」「言わない」になっているものがある。公文書については、括弧書き(発言)は発言者の確認をとる、あるいは電子決裁システムを整備するなどの対応をしていかなければいけない。そういうところが欠けていた点に問題があった。
【志位氏】一切、答えていない。しかし国民はみんな知っている。総理、あなたを守るために改ざん、隠蔽、破棄、虚偽答弁など悪質きわまる行為が行われた。あなたのうその答弁につじつまを合わせるためだった。総理夫妻の関与はいまや明らかだ。責任をとって総理の職を辞することを強く求める。
片山氏「内閣人事局、下手すると官邸の独裁」
【維新・片山虎之助共同代表】まず国会運営について注文したい。与党は強行採決をしない、野党はその代わりに審議拒否しないことをお願いする。もりかけ(森友・加計)問題もにぎやかだが、似たような質問、似たような答弁に国民はうんざりしている。
私がテーマにしたいのは官邸権力というか人事権。内閣人事局が一元的に中央の幹部人事をやるのは、「これで政治主導になる」ということだったが、六百何十人の人事を一括でやるのは神様しかできない。下手をすると官邸の独裁になるし、官僚の萎縮を招く。今、霞が関が「忖度(そんたく)の府」になったとか、いろんな問題が起きている。仕組みを直さなければいけない。
【安倍晋三首相】官邸で人事局をつくるというのは「政治主導を明確にしていく」ということだ。しかし権限の行使は、基本的にはほとんど省から上がってきたもの、事前に相談をしている。偏りがないように常に気を使い、人の人生、能力をちゃんと使えるかどうかということに恐れを持ちながら対応していくことが肝要だと思っている。
【片山氏】若干、修正していただきたい。(各大臣は)業務執行権だけあり、任命権、トータルとしての権限がスムーズに行使できていないのではないか。イニシアチブを各大臣に返し、(官邸は)チェックだけしたらいい。今の制度は降格人事ができるが、やめた方がいい。公務員が生き生きと働ければ、霞が関や永田町が活性化する。