検察側の冒頭陳述を聞く渋谷恭正被告=4日午前、千葉地裁、絵と構成・小柳景義
「事件には一切関与していません」。千葉県松戸市の小3女児殺害事件で殺人罪などに問われた渋谷恭正(やすまさ)被告(47)は、4日の初公判で、起訴内容を全面的に否認した。娘に何が――。犠牲になったレェ・ティ・ニャット・リンさん(当時9)の父親は遺影を手に入廷し、真実の解明を願った。
被告「架空で捏造」と無罪主張 リンさん殺害事件初公判
「子どもの目の前で身柄を拘束され、逮捕状も提示されないまま強制的に連行された。無実、無罪を主張いたします」。4日午前10時に開廷した初公判。起訴内容への認否を問われた渋谷恭正被告(47)は、はっきりとした口調で裁判長らに訴えた。
被告はリンさんの通っていた小学校の保護者会長を務め、子どもたちの登下校の見守り活動にも関わっていた。この日、黒色のジャージー姿で入廷した被告は、検察官側の席に座るリンさんの遺族には目をやることなく、うつむいたまま弁護側の席に向かった。検察側の冒頭陳述の間も正面の遺族の方を見ずに、下を向いたままだった。
午前8時20分ごろ。事件で犠牲になったリンさんの父、レェ・アイン・ハオさん(35)が黒いスーツ姿で千葉地裁の前に姿を見せた。最愛の娘を突然失ってから1年2カ月。「元気なリンちゃんがこんな姿になってしまった。許せない」。遺影など数枚の写真を示しながら、集まった報道陣に訴えた。
「日本で輝かしい将来を送ってほしい」。ハオさんと妻のグエン・ティ・グエンさん(31)はそんな思いを込め、娘を「ニャット(日本)・リン(輝き)」と名付けた。親の思いに応えるかのように、リンさんは「日本とベトナムの懸け橋になる」と話し、周囲には「通訳ガイドになりたい」と語っていた。
でも、あの事件ですべてが変わった。グエンさんは毎晩のように娘を思って涙を流し、幼い長男は「早く帰ってきてね」と何度も遺影に語りかけていた。ハオさんはショックで、今も仕事に復帰できていない。
「裁判が始まるのを待つのはもう限界」。ハオさんは今年1月にJR上野駅や千葉駅前に立ち、裁判の早期開始を求める署名活動などを行ってきた。
そして迎えた初公判。「今まで待っているしかできなかった。早く真実を話してほしい」とハオさん。「リンちゃんも一緒に聞いてください」と話し、笑顔の遺影を手に、険しい表情で地裁に入っていった。(松島研人、武田遼)
■登下校中の子ども、ど…