シンガポールで12日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談後、会見するトランプ米大統領=ランハム裕子撮影
12日にシンガポールで開かれた米朝首脳会談。終了後の日本時間午後5時15分ごろから始まったトランプ米大統領の記者会見は、まさに独演会だった。「25時間寝ていない」というトランプ氏は、記者が浴びせかける質問に自由奔放な「トランプ節」で切り返し、1時間5分にわたって会談の成果を誇った。
トランプ氏は、会談後に北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長を「非常に才能豊か」と評する発言をしていた。その真意を記者に問われると、こう切り返した。
「才能があるからだ。このような状況を、あの若さで運営できる人は1万人に1人もいないくらいだろう」
いったい、正恩氏は非核化について何と言ったのだと問われると、「金委員長は『ここまで深く入り込んだことはなかった』と言った。彼はもしかしたら、私以上に熱心かもしれない」と正恩氏を持ち上げた。
ところが、北朝鮮が国際社会との過去の合意を何度も裏切ってきたことを指摘されると、「(今回は)政権が違う。大統領が違う。国務長官も違う」とけむに巻いた。
その北朝鮮が「非核化」の見返りとして求めていた体制の安全をどう保証していくのかを問われた際には「戦争ゲーム」という表現が飛び出した。
「私たちは韓国と共に長い間、(軍事)演習をしてきて、『戦争ゲーム』と呼んでいる。これに費やすお金は途方もない」
今後の米韓軍事演習を続けていくことに消極的な姿勢を示したものだ。
だが、こうして苦労してまとめあげた共同声明も、「今回は時間がなかった。何時間も集中して話し合ったが」と言い訳。今後の実務者協議に委ねるような発言も出た。
会見の終盤、会談の発言記録の有無を問われた。
「録音していない」「録音があるのだろうか? あれば面白い代物だ」
会話の内容を説明してほしいと求められると、「それは確かめなくてもいいと思う。あらゆる時間の中で最高の思い出を手にしたのだから、やらなくていいと思う」。