国道114号の川俣町と浪江町の町境に新たに設けられた英語の看板=福島県浪江町津島
双葉郡と中通りを結ぶ全長約70キロの国道114号。浪江町の帰還困難区域を通る27キロ区間の通行が自由になって8カ月が過ぎた。被災地との往来は便利になり、行き交う車は格段に増えた。そんな国道114号を走ると、最近、英語表記の看板が目に付く。一体なぜなのだろう。
国道114号の起点となる福島市仲間町から37キロ。
復興工事が続く川俣町山木屋地区を走り抜け、浪江町との町境に向かう。「津島ゲート」の目前で、道路脇の看板にはこうあった。
「Caution」(警告)。英語表記の看板だ。「No Entry!」(立ち入り禁止!)、「high-dose radiation area」(高線量区間)など、「114」の数字以外は、オール英語表記。赤文字や黄色の縁取りなど、山間の一本道で際立っている。
看板を設置したのは、「Local nuclear emergency…」。つまり、国の原子力災害現地対策本部だ。
英語の看板は、4月半ば以降、国道114号のほかに国道6号沿い、常磐道の常磐富岡ICなど計12カ所に26枚が設置された。
なぜ英語なのか。看板の設置を要望した県警の答えは明瞭だった。「114号を通る外国人に説明するためです」
通行が自由化され、朝に夕に、復興関連の工事車両や除染土を中間貯蔵施設に運ぶダンプカーが行き交うようになった。
同時に、「見学」や「撮影」を理由に訪れる外国人が増えたという。通行は自由化されても、道路が走るのは放射線量が高い帰還困難区域。徒歩や二輪車での通行はできず、長時間の駐停車や車を降りることは控えることになっている。
だが、現地を訪れる外国人の中には、車から降りてしまったり、徒歩やバイクでやってくる人も少なくないという。県警の担当者は「帰還困難区域内で写真撮影している外国の方に職務質問した際、『入ってはいけない場所だと分からなかった』という声があった。そこで国に看板の設置を要請したのです」。ゲートの警備員の男性も「先日もバイクに乗った外国の方が来たので、英語の看板を示してUターンしてもらいました」と話す。
実際の文面を考えたのは、内閣府の原子力被災者生活支援チーム。昨冬から表記の検討を始めたという。
福島の原発事故は世界でも例がない。「帰還困難区域」に相当する英語表記は一般的でなかった。そこで「立ち入り禁止」「高線量区間」など、一目で分かる表記にしたという。
■交通量増で不…