イラクの南部バスラで15日、治安当局が厳戒態勢を敷く中、州議会の前に集まり国旗を手にするデモの参加者=AP
イラク南部の油田地帯バスラやイスラム教シーア派の聖地ナジャフなどで、失業や、電気や水道の公共サービスが行き届かないことに対する抗議デモが広がっている。アバディ首相はバスラへの投資と公共サービスの改善を打ち出したが、収束する見通しは立っていない。イラクでは5月の総選挙後も新政権が発足できておらず、デモが続けば国が不安定化するとの懸念もでている。
デモは8日にバスラで始まり、ナジャフやカルバラ、首都バグダッドの一部など16日時点で大都市を含む7カ所に広がった。AFP通信などによると、これまでにデモ参加者8人が銃撃などで死亡、少なくとも100人以上が負傷した。一部が政府の建物に放火したり、治安部隊に投石したりしている。
AP通信などによると、バスラでは15日、州政府の庁舎前に集まった数千人のデモ隊に対し、警察が放水したり、催涙ガスを使ったりしたという。
ナジャフでは13日、デモ隊数百人が空港に押し入り、航空機の発着が一時中止された。クウェート航空やロイヤル・ヨルダン航空などは、ナジャフへの運航見合わせを決めた。
バスラなど南部では夏場の気温が50度に達することもあり、数年前から夏になると電力や水の不足への抗議デモが起こっていた。死者やけが人が出ることもあり、政府はそのたびに改善策を約束。だが、停電や断水はたびたび起こり、政府が十分な対策をしてこなかったという住民の不満が今回のデモの背景にある。
イラクは昨年12月、過激派組織「イスラム国」(IS)の戦いの終結を宣言し、復興の途上にある。5月に総選挙が行われたが、電子投票システムなどで不正があったとして、票の再集計が行われている。新政権発足のめどは立っておらず、デモで混乱が広がれば、復興がさらに遅れるとの懸念もある。(ドバイ=高野裕介)