日露戦争(1904~05年)で朝鮮半島沖で沈んだロシア軍艦を巡り、韓国で金塊騒動が起きている。「船体を発見した」という韓国企業は、軍艦に10兆ウォン(約1兆円)相当の金塊が積まれている可能性を示唆。韓国政府は、株価や仮想通貨の価格操作などを狙った詐欺を念頭に調査する方針だ。
軍艦はロシア・バルチック艦隊所属の巡洋艦ドミトリー・ドンスコイ。1905年、日本海の鬱陵島(ウルルンド)沖で沈んだ。
軍艦の引き揚げのために設立した韓国企業「シンイルグループ」が今月17日、船体を15日に発見し、引き揚げる方針だと発表した。引き揚げ作業資金を獲得するために仮想通貨も発行していた。
シンイルグループは当初、「150兆ウォン(約15兆円)相当の金塊が積まれている」と主張。この発表直後から、同社系列企業の株価が急騰した。一方で韓国メディアは、金塊があった具体的な証拠は確認されていないと報じた。
騒ぎを受け、韓国金融監督院は25日、国会答弁で一連の騒ぎの真相を調査する方針を示した。シンイルグループは26日、ソウルで記者会見を開き「150兆ウォンとは言っていない」「200トンの金塊があれば10兆ウォン相当になる」などと主張。金塊の存在を証明する文書などは示さなかった。
「ドンスコイの金塊」を巡っては2003年にも、別の企業が船体を発見したとして引き揚げを試みたことがある。(ソウル=牧野愛博)