東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会合に出席するためシンガポールを訪問中の河野太郎外相は3日夜、北朝鮮の李容浩(リヨンホ)外相と短時間、言葉を交わした。外務省関係者によると、河野氏は日朝首脳会談を開く用意があると伝えたという。6月の米朝首脳会談後、安倍晋三首相が日朝首脳会談の早期実現に向け調整を指示してから日朝の閣僚接触は初めて。
河野氏が3日夜、記者団に接触を明らかにした。外務省関係者によると、両氏は同日午後7時半(日本時間同8時半)ごろ始まったASEAN地域フォーラム(ARF)参加国による晩餐(ばんさん)会の際、会場外の控室で河野氏が李氏に声をかける形で言葉を交わした。
河野氏は記者団に「日本の基本的な立場を伝えた」と語った。「日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核・ミサイルを包括的に解決する」との日本政府の姿勢を伝達。その上で、拉致問題を解決して国交正常化すれば、経済支援をする用意があるとの考えも伝えたとみられる。河野氏は李氏の反応は明らかにしなかった。
安倍首相は6月の米朝首脳会談を受け、日朝首脳会談について「どのようなチャンスも見逃すつもりはない」として早期開催の調整を指示。河野氏の接触は、首相のこうした方針を受けたものだ。
政府内には、9月にロシア・ウラジオストクで開かれる「東方経済フォーラム」に北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が出席した場合、首脳会談を模索する案が浮上している。李氏は対日政策を担当していないものの、高い政治レベルで日本の立場を改めて伝えることが重要と判断したとみられる。
河野氏は昨年8月にフィリピン・マニラで開かれたARFでも、李氏と短時間立ち話をしている。(シンガポール=鬼原民幸、田嶋慶彦)