今春に開通した新名神高速道路の高槻―神戸間(43・1キロ)の上下線トンネル8カ所に、緑色の光の輪が時速95キロで進む「ペースメーカーライト」が設置されている。光を追う心理を利用して減速を防ぎ、渋滞を起きにくくする効果を狙ったものだ。渋滞時は消えるが、車の流れがやや悪くなっても光は95キロのまま。ドライバーから「急に車間が詰まって危険」と戸惑う声も出ている。
ドライバーはトンネル内の下り坂から上り坂に差しかかる区間で減速しがちで、渋滞のきっかけになることが多い。西日本高速道路(NEXCO西日本)が新名神で採用したペースメーカーライトは、トンネル両側面の上部にあるLED照明を、進行方向に順番に緑色に点滅させる仕組み。壁面に広がる光の輪が法定速度の100キロに近い95キロで進み、ドライバーに同調を促す。
新名神では2キロ間隔で車の流れを測定し、時速40キロ以下になると管制センターが「渋滞」と判断。トンネル内の緑の光を消し、入り口と渋滞最後尾で黄色の光を点灯させて後続車に知らせる。火災や大事故時は赤色、落下物などがあれば黄色に変えて注意を促す。
しかし、やや混雑して車の流れが60キロに落ちても、緑の光は95キロで進む。トンネル内を運転した大阪府高槻市の男性(63)は「緑の光が何のためなのか理解できずに目を奪われ、前のトラックに近づいて慌ててブレーキを踏んだ」と危険性を指摘。神戸市の女性(44)も「光に合わせて走行したが、催眠術にかかったみたいで戸惑った」と話す。
「渋滞学」の研究で知られる西成活裕(かつひろ)・東大教授は「発展途中の技術で、光の動きで速度低下に気づくかは個人差がある。光の役割を知らずにただ追ってしまい、逆に危険になることもあり得る」と指摘する。
NEXCO西日本によると、光に幻惑されて事故につながった例はないというが、「走行しにくい」という意見や問い合わせは寄せられているという。
仕組みについてはサービスエリ…