トランプ米大統領の元個人弁護士、マイケル・コーエン氏が21日、ニューヨークの連邦裁判所で、選挙資金法違反を含む八つの罪について有罪を認めた。捜査当局との司法取引に応じ、トランプ氏と不倫関係にあったとされるポルノ女優ら2人に対し、トランプ氏の指示で口止め料を払ったことも認めた。トランプ氏の「懐刀」が捜査に協力したことで、選挙資金の流用など新たな疑惑が出てくる恐れもあり、トランプ氏にとっては痛手となりそうだ。
コーエン氏は2016年の米大統領選中、トランプ氏と不倫関係にあったとされる女性2人に「口止め料」を支払った。その際に選挙資金を流用した疑いで、米連邦捜査局(FBI)が4月、コーエン氏の事務所などを家宅捜索していた。
コーエン氏はこの日、裁判所で、選挙資金法や銀行詐欺、脱税など八つの罪を認めた。コーエン氏の弁護士は声明で「トランプ氏が2人の女性に関する罪を犯すよう指示した。この支払いがコーエン氏の罪なら、なぜトランプ氏の罪でないだろうか」と訴えた。
コーエン氏は10年以上、トランプ氏の個人弁護士として、トラブルを担当してきた。かつて「トランプ氏や彼の家族を守るため、銃弾を私が受ける」と語っていた。トランプ氏も「口止め料」について、記者団に「まったく知らない。コーエン氏に聞いてくれ」と否定していた。
しかし、FBIの捜査が進みだすと、コーエン氏は米メディアに「私は第一に家族に忠誠を誓う」などとトランプ氏から距離を置いた。検察側から10年以上の懲役や全財産の没収などを突きつけられ、罪を軽減するため、捜査に協力する司法取引に応じる形で、トランプ氏の指示を認めた。
一方、バージニア州の連邦地裁では同日、トランプ氏の選対本部長を務めたポール・マナフォート被告が脱税や銀行詐欺など計8件の罪で有罪の評決を受けた。「ロシア疑惑」を捜査するマラー特別検察官によって起訴された。同被告はさらに、ウクライナの親ロシア派政党に絡む脱税や資金洗浄などの罪で起訴されている。トランプ氏がマラー氏の捜査を「魔女狩り」と批判する中、有罪判決を勝ち取ったことで、捜査の弾みになる可能性がある。(ワシントン=土佐茂生)