PL学園時代、高校野球のスターとして脚光を浴びた元プロ野球選手、桑田真澄さんが監修に携わった舞台「野球 飛行機雲のホームラン」(西田大輔作・演出)が25、26日に大阪で上演される。桑田さんは、第100回全国高校野球選手権記念大会で、「レジェンド」として始球式をした。
「野球の先人たちがどんな思いで戦争に行ったのか。そう思うと、涙が止まらなくなりました」。8月上旬の東京公演を見終えた桑田さんの感想だ。
1944年、戦局が悪化した日本。米国が発祥の野球は敵性スポーツとして禁止され、甲子園大会も中止になった。しかし、純粋に野球がしたい青年たちは試合をする――。9回の攻防が繰り広げられる進行で、俳優たちの野球の動作は速くなめらか。一方、スローモーションになる場面では複層的に、登場人物がいや応なく戦争に巻き込まれていくエピソードが演じられる。西田は「『反戦』を直接的な言葉ではなく、青年の姿を通して描きたかった」と話す。
監修の依頼は突然だった。西田の切望を受け、制作陣がプッシュ。桑田さんはほとんど舞台を見たことがなかったが、「新しい挑戦。チャンスと受け止めました」。東京のグラウンドで2回にわたり約2時間の実技練習を実施。俳優たちにキャッチボール、ゴロ・フライの処理、バッティングなどを指導した。戦時中のピッチングフォームも再現した。
「舞台を通じて、二度と戦争をしてはならないというメッセージが強く伝わってきました。平和だからこそ、野球ができる。いろいろな国のチームと試合をすることで、相手の国の歴史や文化を理解し合うことができるはずです」
来年、101回を迎える大会への思いも強い。「高校野球の良さは、高校生がひたむきにボールを追いかける姿にある。先人たちが育ててきた野球を、次の100年に向けて、進化させていくことも大事だと思います」
大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ。安西慎太郎、多和田秀弥、藤木孝ら出演。8900円。0570・200・888(キョードーインフォメーション)。(米原範彦)