(29日、ソフトバンク3―1西武)
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九回2死一塁。一発出れば同点の好機で、本拠での胴上げを願う西武ファンの声援が大きくなる。打席は2日前に決勝アーチを放った秋山だ。だが、3球目を遊撃へ打ち上げると、歓声はため息に変わった。
勝つか引き分ければ、10年ぶりのリーグ優勝が決まる本拠最終戦。これ以上ない大舞台で先発を託されたのが、今季のソフトバンク戦で2戦2勝だった2年目の今井だ。
栃木・作新学院高で夏の甲子園優勝を経験した右腕は「緊張すると思ったけど、試合になればいつも通り」だったという。だが、三回にアクシデントに見舞われた。スライダーを投げた際に右の人さし指が引っかかり、親指の内側から出血。ユニホームの右太ももに血がついた。
「投球に影響はなかった」と否定したが、四回に松田宣に左翼へ逆転2ランを放り込まれた。打たれたのは高めに抜けたスライダー。失投に両ひざに手を置き、うなだれた。「1打席目も同じ球種を打ってきた。狙われているのはわかっていたのに」
強力打線も内野ゴロの間による1点のみで、20歳の右腕を援護できなかった。辻監督は「1年間、応援してくれたファンの前で優勝したかった。残念です」と話したが、すぐ前を向いた。「もう一つ勝てるよう、選手がやることは変わらない」。13連勝で優勝とはいかなかったが、歓喜の瞬間は延びただけだ。(大坂尚子)