武豊騎手、史上初のJRA4000勝
武豊騎手、史上初のJRA4000勝 2万1235戦目
メイショウカズヒメが最後の直線で先頭に躍り出ると、阪神競馬場のファンから歓声が上がった。
2着馬に1馬身以上の差をつける快勝。派手なポーズもなく、武豊は静かにゴールを迎えた。
「多くの方々に支えられて、4000という数字を重ねられた。改めて感謝の気持ちを感じます」
馬主、生産者、調教師、厩務(きゅうむ)員、幼い頃の育成者など1頭の競走馬には数多くの人が携わる。バトンの最後の手綱を託されるのが騎手だ。責任は重大だが、その分やりがいもある。
ただ4000勝の金字塔を目標にしてきたわけではない。「これで終わりじゃないですから。明日(30日の中山競馬)のレースも勝ちたいですし、早く4001勝もしたい」と勝利への変わらない執念も見せた。
「競馬はファンがいなければ成り立たない。自分のためじゃなく、ファンのためのレースをやりたい」。ファンの応援を背に受け、これからも乗り続ける。
驚異の勝率
武豊の口癖は「もっとうまくなりたい。もっと実力をつけたい」だ。
ダービー5勝、天皇賞は春秋合わせて14勝。最高峰のGⅠレースは計75勝だ。誰もなし得なかった数々の記録を作っても、次のステップへの歩みを止めることはない。
中央競馬は週に2日、土日に行われるのが基本だ。1日に12レース。全レースに騎乗して、全レースで勝ったとしても3年以上かかる4000の白星を、31年半で積み上げた。
「ジョッキーをやらせてもらっている以上、勝ちたいというモチベーションが切れたことはない」
競馬は1対1の勝負ではない。1対10、1対17といったように、多くの相手と同時に戦う。常にライバルたちの情報を集め、研究を怠らない。敵の特徴を知ることで自らの作戦を練る。絶えることのない研究心と向上心が大記録を支える。
勝率1割なら一流と言われる騎手の世界で通算1割8分8厘の高率を誇る。世界各国を飛び回り、自らに刺激を与えている。10月7日にはクリンチャーとのコンビで7度目のフランス凱旋門賞に臨む。(有吉正徳)