イランの観光地で欧米からの来訪客が激減している。トランプ米政権の制裁に加え、インフラ面の不備が災いしている。石油依存を脱して観光を経済の柱に、という政府の思惑通りにはいかないようだ。(イスファハン=杉崎慎弥)
壮麗なモスクを誇り、「世界の半分がここにある」とうたわれたイラン中部の観光地イスファハンに異変が起きている。
夏休みシーズンの7月末。モスクや土産物店が立ち並ぶ中心部のイマーム広場で目立つのは、白い民族衣装をまとったイラクやパキスタンの観光客、そして地元のイラン人の姿だ。
トランプ米政権が5月に核合意を離脱して制裁を再開すると表明して以降、増加傾向だった欧米の観光客が激減した。土産物店主らは「昨年に比べ欧米の客は6割以上減った」と言う。
ペルシャ陶磁器の店を営むアミル・モハンマドさん(28)は「トランプのせいで台無しだ。欧米人に比べたら、イラクやパキスタンの人たちはお金を落としてくれない。このままではじり貧だ」と肩を落とした。
統計によると、制裁の影響で2012年ごろまで外国人客は200万~300万人台にとどまったが、15年の核合意もあって最近は500万人前後に増え、中でも欧米からは年50%以上のペースで増えていた。
8月に一部再開された米制裁の影響で、欧州の直行便が次々と停止。観光客減少に拍車をかけている。
美しいイスファハンが…
打撃は制裁だけでない。
中心部を流れるザーヤンデ川は…