イランの最高指導者直属の精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」は20日、「イランの領空内」で米国の無人偵察機を撃墜したと発表した。米軍も撃墜を認めたが、領空侵犯を否定した。ホルムズ海峡付近のタンカー攻撃をめぐり、両国の対立は激化。緊張がさらに高まるのは必至で、偶発的な軍事衝突も懸念されている。
防衛隊の発表などによると、同隊は20日早朝、同国南部ホルムズガン州のオマーン湾近くで、イランの領空内を侵犯した米国の無人偵察機「グローバルホーク」(GH)を撃ち落としたという。防衛隊のサラミ総司令官は「イランへのいかなる攻撃に対しても我々は強く反応するという、明確で力強いメッセージだ」と述べた。
一方、米中央軍の報道官は20日、米海軍のGHがイランの地対空ミサイルで撃墜されたことを認めた。ただ、場所はホルムズ海峡付近の公海上空だとした。「いわれもない攻撃だ。イラン領空という同国の報道は誤りだ」と非難。トランプ大統領は同日、「イランはとても大きな間違いを犯した!」とツイートした。
同海峡付近のオマーン湾では13日、日本の海運会社が運航するタンカーなど2隻が攻撃され、米国はイランの関与を主張。イランは全面否定している。米軍は、事件の数時間前にイランがタンカー付近の上空を飛んでいた米軍の無人機を狙って、地対空ミサイルを発射したとも主張している。
トランプ米政権によるイラン産原油の全面禁輸が5月初めに始まって以来、米・イランの関係は悪化の一途をたどっている。イランは原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖をちらつかせて、米国を牽制(けんせい)。米国は5月、原子力空母や戦略爆撃機を中東に派遣。今月17日にも米軍約1千人を中東に増派すると発表し、軍事圧力を強化している。(バンコク=杉崎慎弥、ワシントン=渡辺丘)