築地市場の移転とともに、魚河岸を去る人たちもいる。
「築地がなくなるなんて、実感がわかないね」
魚河岸ものがたり
築地市場内のマグロ専門仲卸「佐駒商店」の佐藤康夫さん(56)は6日、店にあったすべてのマグロの切り身を店頭に並べた。豊洲に移らず、この日で閉店する。「長い間、ありがとうございました」と言って客を見送った。「お世話になったお客さんに会うと、閉めるのが悪いと思うね」と漏らした。
創業100年近くの老舗
佐駒は、祖父が福島から上京して始めた店だ。魚河岸がまだ東京・日本橋にあった1910年ごろに創業。23年の関東大震災で市場も自宅も被災した。その後、魚河岸とともに店は築地に移り、営業を続けてきた。店を継いだ父親はがんを患い、佐藤さんが12歳の時、築地市場の目の前にある現在の国立がん研究センターで息を引き取った。
店は祖父や母親が支え続け、佐…