日本政府が大阪誘致をめざす2025年万博の開催地決定まで残り1カ月を切った。実現すれば、55年ぶりの大阪万博だ。安倍政権は20年東京五輪後の経済成長の起爆剤になると期待し、財界や地元自治体とともに関係各国への働きかけを強める。ただ、ライバル国も最終盤に来て追い込みに必死。さらに、実際の投票では日本を悩ますある事情も。万博は日本に来るのか――。
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「リトアニアは大阪を支持する」
10月12日、首相官邸。安倍晋三首相との会談を終えたリトアニアのサウリウス・スクバルネリス首相は共同記者発表で、2025年万博の日本支持を明言した。
安倍首相は、第2次世界大戦中にリトアニアで多くのユダヤ人の命を救った日本の外交官に触れ、「杉原千畝氏を通じて育まれた絆は着実に深まっている」。両首脳は笑顔で握手を交わした。
11月23日に開催地が決定する25年万博に立候補しているのは、日本のほかロシア(エカテリンブルク)とアゼルバイジャン(バクー)。博覧会国際事務局(BIE)の総会で加盟170カ国の投票で決まる。
各国の加盟国への攻勢は熱を帯びる。日本も外務省が週1回、支持の動きを分析する「選挙対策会議」を開催。大使らの情報をもとに「票読み」し、対応策を練っている。
焦点となるのは、「大票田」とされるアフリカ(49カ国)や欧州(47カ国)、中南米(30カ国)。日本は地理的に近いアジアや大洋州の票を固めつつ、取り込みを図る戦略を描く。票の奪い合いは激しさを増しており、日本も大阪府の松井一郎知事が9月に欧州に足を運び、吉村洋文・大阪市長が5月に2度目のアフリカ訪問を行うなど、地元自治体が政府と足並みをそろえて誘致活動に力を入れる。
カギを握るのは、フランスだ。
当初名乗りを上げたフランスは誘致活動でも先行していたが、財政負担への懸念から今年2月に立候補を辞退。フランスの地盤とされる欧州や旧宗主国としてゆかりの深いアフリカの票が流動化したとされる。
日本は、フランスの支持を取りつけてこれらの国々の「受け皿」になることを狙う。政府関係者によると、10月17日にパリを訪問した安倍首相はマクロン大統領と会談した際、ライバル国を刺激しないよう水面下で支持を求めたという。
ただ、日本の思惑通りに運ぶとは限らない。投票は無記名で行われるため、「支持の約束をとりつけても6~7割しかあてにならない」(誘致関係者)のが実態。BIEへ分担金を支払っておらず、投票権のない国も約40カ国あるとされる。国名は非公表で、投開票日までに投票権を回復するかもわからない。
外務省幹部はこう語る。「現状は立候補国が三つどもえになっている」(新田哲史、又吉俊充)
「投票したら投資してくれるか」
経済界も力を入れる。各国から…