雲一つない夜空に、巨大な火柱が立っていた。大規模な山火事で、火の粉が吹雪のように舞い上がっていたのだ。
カリフォルニアの山火事、犠牲者44人に 過去最悪
11月9日未明、米カリフォルニア州シミバレー。ロサンゼルス近郊の山沿いの住宅地を襲った山火事を、現地で取材した。
午前1時過ぎ、火元の山から数百メートル離れた場所に警察官や消防隊員が集まった。地元住民も遠巻きに見守っていた。
当初は、火は山の斜面の一区画だけで広がっていた。ところが、30分も経たないうちに、猛烈な勢いで斜面を下りてきた。住民と同じ場所にいた私も熱風を顔で感じた。「逃げろ!」。警察官が怒鳴った。強風に飛ばされた火の粉が私の頭上に舞い降りた。
現地では体が揺さぶられるほどの強風が吹き荒れていた。米国海洋大気庁によると、8日夜から9日未明の最大瞬間風速は40メートル。この強風が、火事を手に負えないものにしていた。
さらに、付近一帯では1カ月近く雨が降っておらず、草木は乾燥しきっていた。これも火災を拡大させる要因になった。
カリフォルニア州では今回、ほぼ同時に州内3カ所で大規模な火災が発生した。発生から1週間以上が過ぎたが、火の勢いは収まらない。17日までに74人が命を奪われ、1千人以上の安否が不明だ。
顔に感じた熱風。頭上を舞った火の粉。山火事の恐ろしさを痛感した取材だった。一刻も早く鎮火してほしい。切にそう願っている。(シミバレー=竹花徹朗)