喜劇俳優の芦屋小雁さん(84)は今年6月、認知症であることを公表しました。今秋からは啓発に汗をかいています。自身のコミカルなイメージを生かした肩ひじを張らない活動について、「これが第二の仕事」。楽しみながら社会とつながる姿が印象的です。
【特集】認知症とともに
【特集】介護とわたしたち
認知症とともに 本人の思い:8
認知症の人が自らの言葉で胸のうちを語る「本人の思い」。特集「認知症とともに」の連載で、原則月1回配信しています。
10月最後の土曜日の京都。小雁さんは認知症の理解を広めるリレーマラソン「RUN伴(とも)」に参加した。青いジーンズに、仲間とおそろいのオレンジのTシャツ姿。観光客であふれる新京極通りを数百メートル走り、ゴールのテープを切った。
「皆さんのお顔を見ながら、うれしいと思っておりました。こういうのを、なんべんもやりたいですね」。マイクを握ってあいさつした。
妻の勇家(ゆうか)寛子さん(54)と京都市内で2人暮らし。寛子さんによると、2017年の初めくらいから予兆があった。家の近くの駅やバス停で待ち合わせするとき、しばしば場所を間違えた。その春、大阪で舞台をつとめた際、土地勘はしっかりあるはずなのに「ここはどこや?」。
京都大学付属病院で診察を受け、血管性の認知症とわかった。ただ、本人に病気の自覚があるかと聞くと、「ない」と即答する。
いま、寛子さんが働く平日は介護ヘルパーに来てもらい、昼ごはんを一緒に買いに行ったり、散歩をしたり。自宅で暮らし続ける支えは、GPSを搭載したスニーカーだ。「お守りつきの靴」と呼んでいる。
今年2月、30時間も家に帰っ…