腸内細菌と認知症に強い関係があることが、国立長寿医療研究センターもの忘れセンターの佐治直樹副センター長らの研究でわかった。食事や生活習慣との関連を調べることで、認知症のリスクを減らす糸口が見つかる可能性があるという。英科学誌サイエンティフィック・リポーツに論文を発表した。
人の腸には1千種類以上、約1キログラムの細菌がいて、年齢で構成割合が変わる。研究チームは2016年3月から1年間に、もの忘れセンターを受診した人の便、磁気共鳴断層撮影(MRI)、心理検査などから腸内の細菌の構成割合や認知症の有無を調べた。
有効なデータが得られた60~80代128人分を解析したところ、やせ形の人に多いとされる常在菌「バクテロイデス」が3割以上を占めた人たちは、そのほかの細菌が多い人たちに比べて、認知症の傾向が10分の1と低かった。
腸内細菌の構成割合と認知症発症の因果関係はわからないが、腸内細菌の作る物質が脳の炎症を引き起こす可能性が考えられるという。佐治副センター長は「今後、対象となった患者の追跡調査を進めて因果関係を調べる。食習慣との関連も解明して食事などを通じた予防法の開発にもつなげていきたい」と話す。(水戸部六美)