中東を外遊中のサウジアラビアのムハンマド皇太子が27日、チュニジアを訪問した。だが、首都チュニスでは、サウジ人記者殺害事件などをめぐって皇太子訪問に反対するデモが発生。30日からアルゼンチンで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議を前に、友好的なアラブ諸国への訪問で王室の安定ぶりをアピールする狙いだったが、出ばなをくじかれた格好だ。
【特集】事件の経緯は、王室の関与は…サウジ人記者殺害疑惑
皇太子は22日のアラブ首長国連邦(UAE)を皮切りにバーレーン、エジプトを訪れ、各国首脳の歓迎を受けた。チュニジアでもカイドセブシ大統領が空港で出迎えた。皇太子は地元メディアに「父のような存在の大統領がいるチュニジア抜きに、北アフリカ地域に来ることはできない」と、友好ムードを演出した。
しかし、ロイター通信などによると、デモ隊数百人がチュニスの目抜き通りに集結。記者殺害事件への関与が取りざたされる皇太子の写真を掲げ「殺し屋は歓迎しない」「皇太子に裁きを」などと訴え、サウジが介入するイエメン内戦や人権抑圧も非難した。
チュニジアは中東で広がった「アラブの春」で民主化。皇太子が訪問した国々や絶対君主制のサウジに比べ、政治的な自由度は高くデモが許容されている。(ドバイ=高野裕介)