外国人労働者の受け入れ拡大をめざす政府の姿勢について、朝日新聞社が全国の主要100社に聞いたところ、態度を明確にした48社のうち47社が受け入れの拡大に賛成したが、うち約半数の24社は「議論が拙速」と答えた。人手不足に直面している経済界からも一定の懸念が示されたことで、議論の進め方が改めて問われる。
政府は、外国人の新しい在留資格を来年4月につくろうと出入国管理法改正案の今国会での成立を狙う。
改正案が閣議決定された後の11月12~22日、製造業や小売りなど幅広い大企業100社に景気認識なども含めてアンケートした。うち4割は経営幹部に面談して取材した。
政府の姿勢を踏まえ、考え方を次の選択肢から選んでもらった。①受け入れ拡大は「移民政策」として進めるべきだ②政府の掲げる「移民政策ではない受け入れ拡大」に賛成③受け入れ拡大には賛成だが、議論が拙速だ④受け入れ拡大は必要ない⑤その他――の五つだ。
結果は③「議論が拙速」が24社で、②「政府に賛成」は22社。①「移民政策として進めるべきだ」と④「拡大は必要ない」は1社ずつだった。15社は回答を控えた。残る37社は「その他」を選んだ。賛否を判断できない、受け入れには課題がある、などとした。
外食チェーン、ロイヤルホールディングスの黒須康宏社長が「一部業態で外国人はすでに貴重な人材」と話すなど、受け入れ拡大の必要性は多くの企業が認めた。
異論が目立ったのは、進め方についてだ。すでにある技能実習制度では、劣悪な労働環境や低賃金が一部で問題となっており、まずはこれを改善すべきだ、といった意見だ。政府の見込みでは、新在留資格の5割ほどを技能実習生からの移行が占める。
下着メーカー、ワコールホールディングスの若林正哉副社長は「技能実習の制度は悪用する事業者がいて、まだ十分に管理監督ができているとは言えない。その中で法案を通そうというのは違和感がある」と話す。
住宅設備機器メーカー、TOTOの喜多村円(まどか)社長も「労働条件の問題を解決せずに受け入れを拡大するのは疑問」とした。
損害保険大手、東京海上ホールディングスの湯浅隆行専務は「受け入れ拡大は積極的に進めるべきだが、急に出てきて今国会で通そうというのは若干、早過ぎる気もする」と言う。
一方、新制度での受け入れ対象になることが有力な建設業からは「日本人と同等の待遇が必要」(清水建設の東出公一郎副社長)、「拡大には基本的に賛成だが、まずは国内人材の確保に努める」(鹿島の押味至一〈おしみ・よしかず〉社長)といった声が出ている。
出入国管理法の改正案は衆院を通過済みだ。法案は受け入れの業種や人数を明示しておらず、成立後に省令などで決めることになっている。野党は「全体像が見えない」と反発。与党からも「実際は移民政策ではないのか」といった声が出ている。(森田岳穂、栗林史子)