17日、あいさつで国技館に来た元稀勢の里は、ファンにもみくちゃにされた。愛された横綱だったと改めて思う。しかし、痛々しいまでの最後の姿は、おのれに厳しかった大関時代までの印象を変えてしまった。土俵に居続けさせた、横綱審議委員会(横審)の責任も重いのではないか。
旧友の元稀勢の里が激励メッセージ 復活を期す右腕とは
昨年九州場所後に「激励」を決議した横審だが8場所連続休場の間、人気の高い稀勢の里をかばい続けた。「かなり寛大に見てきた」とある委員が明かす。
横綱は結果を出せなければ引退するしかない地位だが、引き際の決断は難しい。そのためにも、横審があるのだと思っていた。
7場所連続休場した貴乃花に当時の横審は出場を求め、「12勝以上」と条件も付した。できなければけじめを付けよ、との意味だ。だが「進退は横綱が決めるもの」と言う今の横審は、責任を稀勢の里に丸投げにしているように映った。
確かに最後は自身が決めること。ただ稀勢の里を甘やかしたことで、「休場」のハードルが下がってしまわないか。今後、けがを理由に8場所続けて休む横綱が現れても、横審は簡単に文句を言うことはできないはずだ。(鈴木健輔)