自動運転技術の進歩に、整備態勢が追いつけない恐れが出てきた。中小の整備工場に十分な設備がなかったり、必要な情報を得られなかったりするためだ。国は対策として、メーカーに整備情報の提供を義務づけ、新技術に対応できる整備工場の認証制度を導入する。今国会に道路運送車両法の改正案を提出する。
システムが前方の障害物を感知して自動でブレーキをかけたり、車線変更をしたりする自動運転技術は近年、急速に広まっている。最も一般的な「自動ブレーキ」の2017年製の新車搭載率は76・9%(速報値)。追突事故を減らす効果も実証されている。
ただ、きちんと整備しなければ逆に危険をもたらす。17年に国に寄せられた自動ブレーキの不具合情報は340件で、「前方に何もないのに自動ブレーキが作動した」など整備不良を疑わせる情報も複数ある。16年7月に自動ブレーキの不具合でバスが急減速して乗客2人がけがをしたほか、高速道路で車間距離維持装置を使って走行中の車が前方監視カメラの不具合で急減速して大事故になりかけたこともある。
整備は新技術についての情報や専用の検知器、道具が不可欠だが、各メーカーが出す情報量にはばらつきがある。現状、各メーカーの正規ディーラーが故障や不具合に対応しているが、全国に約9万ある整備工場の2割にすぎない。残り8割は特定メーカーに偏らない一般の工場で、地方に多い。多くが従業員が10人に満たず、新技術に対応する設備を整える余力がない場合もある。整備事業者の全国組織幹部は「日本中どこでも安全に車を整備できる社会基盤が揺らいでいる」と危機感を募らせる。
国土交通省は今後、各メーカーに整備に必要な情報の速やかな提供を義務づける。また、自動運転の整備技術を持った工場を「特定整備事業者」などと認証する制度もつくり、ユーザーが安心して整備を委ねられる環境を整える方針だ。(伊藤嘉孝、贄川峻)