今年の元日、1人の男性(53)が札幌刑務所(札幌市東区)を出所した。
「あけましておめでとう」。笑顔で出迎えたのは、山崎貴志さん(55)。札幌で生活困窮者支援に取り組むNPO法人「ベトサダ」の代表理事を務めている。男性を事務所に連れて行くと、こう語りかけた。
「今回こうして、俺らともつながった。刑務所に出たり入ったりを止めたいんだ。だからもうやめよう」
男性は、大きくうなずいた。前科16犯。若い頃は暴力団に所属し、窃盗や詐欺、覚醒剤の使用など罪を重ねた。両親は他界し、身寄りはいない。刑務所を出ては戻る、の繰り返し。大人になって、刑務所の外で暮らした期間は、最長でも1年ほどしかない。
前回の服役を終えたのは2017年3月。札幌刑務所を出ると、その足で東区役所に向かった。生活困窮者向けのシェルターに入れないか、職員に尋ねたが、入居は仕事に就くことを前提としている、などと説明されたという。
自分には無理だ。そう考えた男…