太平洋フェリー(名古屋市)が8年ぶりに投入した新船「きたかみ」(1万3694トン)が就航した。従来の「優雅な海の旅」のイメージを変え、めざしたのは「身近で気軽な船旅」。ペットと宿泊でき、遊び心のある船内演出もある。
コンセプトは「スペース トラベル(宇宙旅行)」。目的地に向かって進む大海原を宇宙空間と重ねた。
スイートルームは廃止し、代わりに10種類の客室と過去最多の189室の個室を設置。宇宙船のようにコンパクトながらも空間を有効活用しようと、上下のベッドをL字に組んだ部屋もある。船内の中央階段や通路、キッズルームでプロジェクションマッピングのショーも楽しめる。
主な航路は、北海道・苫小牧―宮城・仙台間。志甫(しほ)裕(ゆたか)社長は「生活路線として年に複数回利用する人が多い。船旅に慣れているからこそ使いやすさを求めた」と狙いを語る。同社のフェリーとして初めてペットと泊まれる部屋も2室設け、船上で遊べる場所も用意した。
先代のきたかみは1989年に就航し、約30年にわたり運航した。2011年の東日本大震災の際には仙台港から避難し、約10メートルの津波に遭遇したが無事だったという。新船も、先代にあやかって船体に同じ字体をあしらった。
全長192・5メートル、幅27メートル、定員535人。毎年1~2月には名古屋港発着も数便ある。名古屋から仙台までの運賃は、1人用個室のエコノミーシングルで1万800円(大人1人)。(佐藤英彬)