1987年11月の大韓航空機爆破事件をめぐり、当時の日本政府が早い段階で偽造日本旅券を所持していた元北朝鮮工作員・金賢姫(キムヒョンヒ)元死刑囚の身柄引き取りの放棄を韓国に伝えていたことが、3月31日付で公開された韓国外交文書で明らかになった。韓国は見返りに捜査結果を日本に伝えた。
韓国外交省が今回公開したのは、同事件や88年のソウル五輪などに関連した外交文書1602件。
外交文書によると、日本政府は87年12月2日、駐日韓国大使を通じ、「(金氏が)偽造旅券を所持していた点に鑑みて、日本は一義的に真相を究明しなければならないという立場だ」として、金氏を拘束したバーレーンに協力要請する考えを韓国側に示した。しかし、同4日に「事件で韓国の法益侵害が莫大(ばくだい)なことを考慮」し、韓国への身柄引き渡しには反対しない考えを伝えた。金氏は同15日ソウルに移送された。
一方、公開された別の文書によると、日本の外務省は88年1月5日、金氏の身柄引き受け放棄に批判があることを念頭に、「もし韓国が日本に捜査結果を事前に伝えずに発表すれば、日本政府は国会やメディアから大きな批判を受けると憂慮している」と伝達。韓国は会見前に、北朝鮮の金正日(キムジョンイル)書記(当時)の指示に基づいて88年のソウル五輪妨害を狙った爆弾テロ事件と断定したとする捜査結果を日本に伝えた。(ソウル=武田肇)