内戦で1千万人が飢餓の危機にある中東イエメンを逃れた人々が、隣国ジブチで朝日新聞の取材に応じた。昨年12月、支援物資を搬入できる港湾都市ホデイダでの停戦合意が結ばれたが、政府機関が機能するエリアは限られ、一部では武装グループによる殺人や強盗が横行する。反政府組織による監視も厳しく、国民は息を潜めて国際社会の支援を待っている。
イエメンは2011年の民主化運動「アラブの春」が波及して当時の政権が崩壊。権力を移譲された暫定政権と、反政府武装組織フーシによる内戦が15年に勃発した。暫定政権はサウジアラビア、フーシはイランの支援を受けており、地域覇権を争う2カ国の「代理戦争」になっている。
フーシが支配する首都サヌアを昨年末に逃れた元政府職員サブリー・ザイードさん(49)らによると、国内では複数の武装組織が活動する。警察が機能せずに治安が悪化。流出した武器を持つ市民も多く、夜間は外出できない地域もある。
フーシは支配地域で暫定政権の支持者をあぶり出そうと密告を奨励。ザイードさんの知人男性(28)もフーシ批判を通報され、4カ月間拘束された。取材に対し「イエメンでは誰も信用できなかった」と言う。
空襲や武力衝突で水道や病院、道路などのインフラが破壊され、食料や医薬品が慢性的に欠乏している。物価は内戦前の4~5倍に高騰。衛生状態も悪化して17年にはコレラが蔓延(まんえん)し、2千人以上が死亡した。
ホデイダから昨年10月に逃れた男性(24)は当時、近隣の35人がコレラに感染し、死亡した15人の葬儀を同時に行った。「病院ではフーシ戦闘員の治療が優先された。私の周囲でも、妊娠中の合併症などで治療が必要だった女性7人が亡くなった」と振り返った。
中東では、過激派組織「イスラム国」(IS)に国土の一部が支配されたシリアやイラクに国際社会の注目が集まった。一方、イエメンはアラブ最貧国で資源も乏しく、内戦は「忘れられた戦争」とも呼ばれる。大きな被害が出ているのに、主要国の関心も低く、有効な解決策を打ち出せていない。内戦で夫を失い、ジブチの避難民キャンプに子供3人と暮らすザハラ・シャリーフさん(44)は今年2月の取材に、「世界でどれほどの人が、私たちに目を向けてくれているのか」と嘆いた。
■長期化、背景にサウジ…