3月29日夜、米南部テキサス州エルパソ。メキシコ国境にかかる橋の下に設けられた一画で、数百人が銀色の防寒シートを体に巻いて砂利の上で寝ていた。メキシコ側から不法入国し、米税関・国境警備局(CBP)に拘束された人々だ。周りは鉄条網とフェンスで囲まれていた。
出身地は中米のグアテマラやホンジュラスなど。子どもも目立つ。エルパソは昼間は気温30度近くだが、夜は10度以下になる。冷たい風が吹いて子どもが泣き出すと、男性がジャケットを脱いで掛けていた。
CBPは、一画は「仮設収容施設」と説明する。移民希望者の急増で既存の収容施設が満杯になり、約1カ月前に急きょ開設した。CBPが拘束した移民希望者は3月だけで約10万人。昨年3月の約2倍だ。
地元の民間保護施設で移民希望者を支援するテイラー・レビーさんは「ほこりが舞う中、砂利の上に寝るなんて、ここは施設じゃない。檻(おり)だ」と憤る。病気になったり、けがをしたりする人は絶えないという。レビーさんによると、移民希望者の多くはここに4~5日間とどめ置かれた後、米国滞在許可を得るための移民裁判を受けるまで、米国内に住む親族宅や別の施設に身を寄せるという。
「何でもいいから仕事を」
翌30日、国境近くの長距離バスターミナル。各地に向かう移民希望者が不安げにバスを待っていた。
ホンジュラスから来たアリエンさん(48)は移民裁判を受けるため、妻と息子2人と東部バージニア州に向かうという。足首には腕時計ほどの発信器が黒いベルトで巻かれていた。居場所を把握するために移民当局がつけたという。
ホンジュラスは中米の最貧国の一つだ。アリエンさん一家は貧困とギャングの暴力から逃れるため、昨年10月下旬に国を出た。1カ月半かけて米国境にたどり着き、国境壁を乗り越えて入国したところを拘束された。「収容施設の職員は私たちをゴミのように扱った。でもホンジュラスには戻りたくない。何でもいいから米国で仕事をしたい」
移民を「犯罪者」呼ばわりし、「我が国への侵略」とあおってきたトランプ米大統領。ところが、自ら表明したメキシコ国境の封鎖に、踏み切れないでいる。
CBPは3月31日、橋の下の…