千円札の肖像に選ばれた北里柴三郎の出身地、熊本県小国町。町民は今も親しみを込めて「博士」「柴三郎博士」などと呼ぶ。たどれば同じ先祖に行き着くという北里耕亮町長(50)は9日午後、取材依頼の殺到を受けて急きょ記者会見を開催。「朝、町民から聞いて驚いた。うれしい話」と喜んだ。紙幣が千円札であることも「一番なじみのある、皆が日頃から使うお札なので、とてもよかった」と受け止めた。
柴三郎が町に与えた影響について、「存在が地域の誇りであるのはもちろん、努力を続けることや人の役に立つことなど、博士の精神は子どもたちに脈々と伝えられてきた」と話す。
同町北里にある北里柴三郎記念館には、生家や、柴三郎が私財を投じて郷里の青少年のためにつくった「北里文庫」の建物などがあり、子供の頃に預けられていた家で毎日磨いたという「光るえんがわ」の実物や資料が展示されている。この日、紙幣になることを知った観光客が数組訪れたという。
町の指定管理者として記念館を運営する一般財団法人「学びやの里」の江藤理一郎事務局長(39)は9日朝、町と交流がある学校法人北里研究所(東京)の職員から「ニュースで出てますよ。これから忙しくなりそうなので、密に連絡をとっていきましょう」と連絡を受けたという。
記念館は2014年にリニューアル。年間1万人を超える来館者がいたが、16年の熊本地震の後は半減しているといい、江藤さんは「地道に運営してきたことが報われる気持ち。多大な業績を残した郷土の偉人を日本中の人が身近に感じてくれたらうれしい」と期待を寄せた。
町議の北里勝義さん(67)は柴三郎の遠縁にあたる。新紙幣のことは朝、いとこからの電話で知ったという。「大変うれしい。(03年の)生誕150年の時にお札にしたらという動きがあり、結局、切手の発行になった。あの時の皆の思いが今回かなった」。柴三郎のひ孫弟子にあたる大村智さんが15年にノーベル医学生理学賞を受賞したことも挙げ、「それが契機になったのかなという気もする。これから多くの人が記念館や小国を訪れるようになれば、私たちも元気になる」と話した。