地層や地形を守り、地域振興や教育に生かす「ジオパーク」。観光の呼び水にしたい自治体の思惑もあって申請が相次ぎ、この10年余りで44カ所に増えた。市民ガイドらが活躍してにぎわいをみせる地域がある一方で、地域の足並みが乱れ、運営の不備から認定を取り消されるケースも。専門家は「数は増えたが、質の確保は難しい。ジオパークはいま岐路に立っている」と指摘する。
有料ガイドが人気、年5千人利用
太平洋に突き出た高知県・室戸岬。海岸を歩くと、荒々しく切り立った白黒のしま模様の岩が目に入る。1600万年以上前に深海にたまった砂や泥が海水と混じって降り積もった地層となり、地表に現れた「タービダイト層」だ。
一帯は2008年に日本ジオパークに選ばれ、11年には世界ジオパークにも認定された。15年には、地形や文化が学べる拠点施設「室戸世界ジオパークセンター」が開館。週末には、バスやレンタカーなどで大勢の観光客が訪れる。
行政や地域住民、教育機関などでつくる室戸ジオパーク推進協議会の小笠原翼・国際文化専門員(35)は「強みは活発なガイド活動です」と話す。ジオパークの見どころなどを解説する有料ガイドの利用者は、年間5千人を超す。同協議会の養成講座を受講した室戸市民らが土佐弁を使ってガイドをする。リピーターを増やすため、新たなコースづくりも進めてきた。
ガイド団体の会長、谷口洋介さん(34)は「岬をただ歩くだけでなく、ゲームの要素を取り入れたり、隆起した土地の特徴がわかる港町を散策コースに選んだりしています」と工夫を語る。
学べる施設がなく…
茨城県ひたちなか市の平磯海岸。海岸の近くには白亜紀の地層が露出し、アンモナイトや翼竜の化石が見つかっている。同県北茨城市の五浦(いづら)海岸は、海底にたまった砂や泥の地層が隆起し、波に削られてできた断崖が絶景を作り出している。
これらを含む「茨城県北ジオパーク」は17年12月、日本ジオパーク委員会によって全国で初めて認定が取り消された。
実は、ジオパークとして存在し…