太陽が水平線や地平線の近くでへんな形に見えるのを「変形太陽」と呼ぶ。暖気と冷気が接するところで光が屈折して発生する蜃気楼(しんきろう)の一種だ。
「空の探検家」で写真家の武田康男さん(59)は5月、茨城県鉾田市で海から昇る太陽が、わずか3分弱で様々な姿に見える様子を撮影した。「鮮明な記録は珍しく、完全に二つになった太陽は貴重だ」という。
武田さんによると、海面上に冷たい空気の層があったため、まず上側に反転して見える蜃気楼が発生し、二つに見えた。二つはやがてつながり、やや四角い形に。太陽が少し昇ると、下側に蜃気楼が生じ、逆ひょうたん形になった。その後、蜃気楼は下に離れ、また二つに見えた。
四角い太陽が冬を中心に現れる北海道別海町は、この気象現象を観光資源と位置づける。武田さんのように別の場所でも見られるが、頻度は低い。出合うには腰を据えた観測が必要だ。(米山正寛)