米国の中央銀行、米連邦準備制度理事会(FRB)に対し、露骨な「情実人事」で影響力を強めようとしていたトランプ米大統領が、元ピザチェーン経営者のハーマン・ケイン氏の指名を断念した。ただ、残るもう一人の指名を確実にするための譲歩だという見方もあり、FRBへの介入を強める姿勢は変わらない。
トランプ氏は22日、ツイッターで「私の友だちで実に偉大な男、ハーマン・ケインが、FRB理事に指名しないよう私に頼んできた。彼の気持ちを尊重したい。真の愛国者、偉大な米国人だ!」と投稿した。
ケイン氏は過去の大統領選で共和党から出馬しようとしたが、相次ぐセクハラや不倫疑惑で撤退した人物だ。共和党からも異論が相次ぎ、上院で承認される見通しが弱まったため、辞退を申し出たとみられる。
トランプ氏は、定員7人のうち2人が空席のFRB理事ポストに、ケイン氏のほか腹心のエコノミスト、スティーブン・ムーア氏を指名する考えを示していた。ムーア氏は、2020年大統領選での再選に向けて景気を刺激する利下げを求めるトランプ氏の意向に従うとみられている。
ケイン氏の指名取り下げは、適性を疑問視する声が根強いムーア氏の議会承認を確保するための「譲歩」との見方も出ている。民主党上院トップのシューマー院内総務は「共和党の上院議員がムーア氏を承認するための口実に使うべきではない」とする声明を出した。(ワシントン=青山直篤)