韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が10日、就任から3年目に入る。朴槿恵(パククネ)前大統領の退陣を求める民意を受けて生まれた文大統領の支持率は当初8割を超えたが、最近は5割に満たない。改革が実を結ばず、歴代政権が先送りしてきた構造的問題にからめとられている。(ソウル=神谷毅)
「何よりも雇用を守る。同時に財閥改革の先頭に立つ」。文氏は2017年5月10日の就任演説で、力強く宣言した。
それから2年。日本海に面する工業都市の蔚山。大手メーカー現代自動車の協力企業が集まって開いた採用博覧会を訪ねると、高麗大を卒業したばかりの男性に出会った。米国でビジネスを学び、韓国でインターンを経験。コンピューター関連の資格を二つ取った。就職活動に必要な「スペック」と呼ばれる。
大企業だけに応募して失敗。それでも博覧会にブースを出す中小企業に関心はなく、あくまで狙いは現代自動車で、なんとか手がかりを見つけようと来た。「大企業を好む韓国では当然のことです」
朴●(ビン、王へんに民)希さん(22)は「会計関連の資格を六つ取るため学費に加え月50万ウォン(約4万7千円)の支援を親から受けた」。中小企業の情報が極端に少なく、下調べに来た。
統計庁によると、入社1年目の大企業と中小企業の年収差(17年)は1716万ウォン(約160万円)で、入社20年目は2倍以上の3840万ウォンに広がる。文政権は早い退勤や休日取得を奨励するが、中小企業では対応が難しく、労働条件の差が更に開く。スペックに金と時間を投じてきた身にとって中小企業への就職は妥協と映る。
財閥改革か、足元の成長か
博覧会には中高年の姿もあった。49歳の男性は、最初の就職先が97年の経済危機で倒産。再就職して役員になったが、1年前に肩たたきにあった。「政府の若者重視を受け、中年に辞めてもらって若者を数人採用する企業が増えた。私たちはどうなるのか」
拡張失業率という統計がある。一般の失業率が実態を反映していないとの批判を受けたもので、求職活動を4週間していなくても就職を希望している人らを失業者に含める。
文政権は、就職活動中の若者に月50万ウォンを半年支給する青年手当などの対策をとっているが、拡張失業率は10%以上に高止まりし、中でも15~29歳では19年3月、過去最悪の25・1%に達した。
韓国は財閥の国だ。朝鮮戦争後…