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横なぐりの雨が時折吹き付けた慰霊の日。それでも、沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の「平和の礎(いしじ)」には朝から多くの遺族らが訪れ、亡き人に思いをよせた。 沖縄戦の犠牲者ら約24万人の名前が刻まれた黒御影石の刻銘板がびょうぶのように並ぶ。その一角で、那覇市の沢岻(たくし)正喜さん(80)は水や花を供え、目を閉じた。6人家族で助かったのは1人だけ。小さな声でつぶやいた。「自分だけ生き残ってごめんね」 西原町出身。一家で壕(ごう)に逃げたが、入り口近くに砲弾が落ちた。母と妹がほぼ即死。祖父と兄、弟の3人も大けがで動けず、その場に置いて親戚たちと南へ逃げた。 当時6歳。母が息を引き取る姿を鮮明に覚えているのに、泣いた記憶がない。何の感情もなく、心がまひしていた。 沖縄本島南端まで逃げ、米軍に捕まった。戦後、誰の遺骨も見つからず、防衛隊員として動員された父も帰らず。叔母が必死に育ててくれたが、生活は苦しかった。 「なぜ自分だけ残して死んだのかと、親を恨んだ時期もありました」 1960年代の復帰運動では、… |
覚えていない母の名、礎に刻まれた 孫に託す「証し」
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