陸上の第103回日本選手権は27日、今秋のドーハ世界選手権の代表選考会を兼ねて福岡・博多の森陸上競技場で開幕する。男子100メートルは、ともに9秒台の自己記録を持つサニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)と桐生祥秀(日本生命)を中心に激戦が繰り広げられそうだ。大会を翌日に控えた26日はスタートの練習を繰り返すなどして、それぞれが調整を行った。
サニブラウンは7日(日本時間8日)の全米大学選手権で9秒97の日本新記録を樹立。日本で走るのは100メートル、200メートルで2冠を達成した一昨年の日本選手権以来で、「他の人を気にせず、自分の走りができれば満足です」。体つきもたくましくなり、王者の風格を漂わせる。
5年ぶりの優勝を目指す前日本記録保持者の桐生も好調を維持する。今季は10秒0台を4度記録。「東京五輪も近いので、そのためにはここで勝たないと。自信はある」と言い切った。
この2強を脅かす存在なのが、200メートルが本職の小池祐貴(住友電工)だ。5月のゴールデングランプリでは自己記録を0秒13も縮めて10秒04をマークし勢いづいている。2016年大会王者のケンブリッジ飛鳥(ナイキ)は春先に痛めた左足が回復し、「精神的にも安定している」と充実の表情を浮かべる。10秒07の自己記録を持つ多田修平(住友電工)も「調子が上がってきた」と頂点を狙う。
福岡県での開催は72年ぶり。男子100メートルは27日に予選と準決勝、28日午後8時30分から決勝が行われる。
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男子100メートル以外にも好記録が期待できる種目が目白押しだ。
跳躍種目でもハイレベルな争いが繰り広げられる。男子走り高跳びでは、2月に2メートル35の日本新記録をマークした戸辺直人(JAL)と、日本選手権4連覇を狙う衛藤昂(たかし、味の素AGF)が対決する。4月のアジア選手権では衛藤が2位、戸辺が3位。互いにライバル心を抱いており、今回も好勝負が生まれそうだ。
男子走り幅跳びの橋岡優輝(日大)は、大会3連覇を狙う。アジア選手権で日本歴代2位の8メートル22をマークし、金メダルを獲得した20歳。あと3センチに迫った日本記録の27年ぶりの更新にも期待が膨らむ。本人も「日本記録は通過点。今季中に出したい」と話す。
ハードル種目では、男子110メートル障害で金井大旺(たいおう、ミズノ)と高山峻野(しゅんや、ゼンリン)がともに13秒36の日本記録を持つ。金井が昨年の日本選手権で従来の記録を塗り替えると、高山が6月の布勢スプリントで金井の記録に並んだ。加えて19歳の泉谷駿介(順大)も台頭し、5月のセイコーゴールデングランプリでは、追い風参考ながら13秒26を記録。金井と高山を破って優勝した。
投てき種目では、女子やり投げで5月に64メートル36の日本新記録をマークした北口榛花(はるか、日大)に注目が集まる。世界選手権と東京五輪の参加標準記録も突破し、今大会で初優勝なるか。「65メートルを投げたい」と意気込む。女子円盤投げで3月に59メートル03の日本新記録を出した郡(こおり)菜々佳(九共大)は、3連覇がかかる砲丸投げとの2冠を狙う。