(8日、高校野球新潟大会 高田農商9―2久比岐・柏崎総合)
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「やったー!」。6点を追う六回表、上村伶(2年)の左前適時打で1点を返すと、久比岐・柏崎総合の選手はベンチで拳を突き上げた。10人の選手の中で、唯一の控えだった坂口怜汰(3年)も一塁コーチスボックスで喜んだ。
坂口が入部したのは2年生の春。当時、久比岐の部員は6人しかおらず、単独チームとして夏の大会に出ようと、同じ中学出身の池田翔哉(3年)と柳沢智哉(3年)が新入生を勧誘していた。2人と同じ中学出身は、同学年で10人ほど。「2人の力になりたい」と入部を決めた。
中学時代は科学部員だ。スポーツの経験はなく、初めはキャッチボールすら、ままならない。「硬球が怖かった」というが、連合チームの牛木晃一監督のノックを受けるうち、自ら打球に食らいつくほどになった。昨秋には「ふざけてやってみたら、しっくりきた」と右打ちから左打ちに。その直後の練習試合で生まれて初めて安打を放った時のことを、「気持ちよかったなあ」と振り返る。
七回裏、出番が来た。中堅、三浦翔太(2年)の交代に伴い、右翼の守りにつく。「行ってこい」と牛木監督に背中を押された。昨夏は出場機会のなかった坂口にとって、初めての夏の舞台がやって来た。
七回と八回。坂口の打順は巡ってこず、八回裏、目の前に落ちる相手の右前適時打で、決着がついた。
涙はない。「1年っていう短い間だったけど、とても長く感じた。悔しいけど、やりきった」と話し、球場を去った。(中村建太)