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球児に食育、週1の「どんぶりデー」 部長は家庭科教諭

「いただきまーす」


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6月29日昼、練習を終えた高畠高校野球部の選手たちが一斉にどんぶりに手を伸ばした。同窓会館の食堂のテーブルを選手やマネジャー、教員ら十数人で囲んだ。


この日のメニューは、2017年から顧問を務める三好美智子部長(56)がつくったロコモコ丼だ。


ハンバーグや目玉焼き、ブロッコリーにミニトマトと、色鮮やかな盛り付けが食欲をそそる。この一杯で炭水化物やたんぱく質、ビタミンなどバランス良く栄養が取れるといい、渡部僚真選手(3年)は「毎回メニューが違うので、楽しく食べられます」と喜ぶ。



「食育」に力を入れる高畠野球部は、昨春から週1回ほど「どんぶりデー」を設け、練習後にみんなで食卓を囲む。


発案した三好部長は、家庭科の教諭。「野球は見るのが専門」だが、食についての豊富な知識でチームを支える。


それまで練習後に選手たちが食べていたのは、納豆や卵をかけたご飯ばかり。保護者から「他のメニューも考えてもらえないか」といった声が上がるようになったのが、始めたきっかけだ。


どんぶりの具材にも工夫を凝らす。例えば、ロコモコ丼のハンバーグには刻んだ野菜や豆腐を混ぜ込む。三好部長は「好き嫌いのある選手もいますが、偏りなく栄養を補えるように心がけています」と説明する。


さらに高畠では毎年11月、管理栄養士を招いた食育講座を開く。選手はもちろん、保護者も参加し、一緒に食への知識を深める。


講座の内容は選手の体づくりのみにとどまらず、「一人暮らしの自炊術」「コンビニの活用法」など多岐にわたる。選手らが栄養バランスの良い食事を自分で作れるようにと、調理実習まで開いている。


選手たちは日頃からカロリー計算も学び、日々の食事の栄養バランスを意識する。毎日の練習などを記録する野球ノートには朝昼晩の食事を記す欄もある。「色を意識するのがコツです」と渡部選手。


「体づくりに取り組みながら、卒業後も役立つ食の知識を学ぶ」。それが高畠野球部のモットーだ。



高畠野球部の取り組みが本格的に始まったのは、6年ほど前だ。


この頃、週末の午前練習で、顔色が悪い選手が何人かいた。集中力が続かず、打撃練習ではバットにボールが当たらない。


見かねた丸山信輔監督(37)が理由を探った。すると、体調の悪い選手は共通して、朝食をとらずに練習に参加していたことがわかった。練習前に学校で朝食を食べさせるようにしたところ、体調不良を訴える選手はいなくなった。


「選手のプレーに、食が果たす役割は大きい」。そう気づいた丸山監督は、食を通じたチーム強化に乗り出した。


14年夏から当時の選手10人全員に毎日、白米や卵などを中心にした間食を多く取らせるようにした。半年後、体重が増えた選手たちの打球の飛距離は大きく伸びた。翌15年の秋の県大会では、16年ぶりに置賜地区予選を突破し、県大会出場を果たした。


丸山監督は手応えを感じた。しかし、こうも思った。「結果を求めて無理やり食べさせていると、やがて選手は食べることが嫌いにならないか」(西田理人)


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