戦っているのは選手だけじゃない。大好きな仲間を支えようとマネジャーになった。時にぶつかり合いながらも、選手たちと一緒に喜びを分かち合ってきた。
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一関一(岩手県)の佐藤桃華さん(3年)は、野球部でただひとりのマネジャー。36人の選手を1人で支える。てきぱきと仕事をこなす姿から、伊藤崇監督に「全国に誇れるスーパーマネジャー」と評されるほどだ。
授業が終わると練習に向けて準備を始める。飲み物をつくり、グラウンドの給水地点に置く。空になっていないか気を配りながら、タイマーで練習時間を計る。合間に補食の卵かけご飯も用意する。1日計3升、二つの炊飯器で炊きあげ、近くのスーパーに自転車で卵を買い出しに行く。
兄が一関一の選手で、子どもの頃から試合を見ていた。そして、選手たちと同じようにマネジャーの姿も輝いて見えた。佐藤さんは中学3年生まで二塁手としてプレーしていた。選手を続けるか迷ったが、あの日あこがれたマネジャーのようになりたいと思った。
一関一に進学し、マネジャーとして野球部に入った。3年生の先輩マネジャーがいたが、秋には引退した。1人では先輩のように動けず、たびたび優先順位を間違えた。
「氷袋もつくれていないし、飲み物も空じゃん」。2年の春、とうとう選手からクレームがついた。飲み物を準備しても、置く場所を間違えることがあった。そうしたことで選手たちとすれ違うこともあり、自分自身が情けなくなった。
でも、仲間たちと一緒に球場にいるのが好きだった。昨秋の地区予選決勝で一関学院を4―3で破ったとき、佐藤さんはいつものように記録員としてベンチにいた。「強い相手で緊張したけど、点が入って喜ぶ選手たちの姿を見て、私もうれしくなった」。ピンチでもあきらめず、点が入ればハイタッチして喜び合う――。この選手たちと戦っていきたいと再認識した。
それぞれの立場で野球と向き合っている選手とマネジャー。今では互いを笑って受け入れられるようになった。「ぶつかり合ってお互いの不満を知った分、絆が深まったのかな」。あの日、佐藤さんに厳しい指摘をした選手も「朝早く来てグラウンドのベンチを拭いてくれる。そんなところまで気がつけるのはすごい」と感謝を口にする。
「最後までみんなと笑っていたい」。明るくてまっすぐな選手たちを支え続けていく。(御船紗子)