(12日、高校野球滋賀大会 米原1―0大津商)
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五回裏1死のピンチ。大津商の井上龍捕手(3年)は、先発・立尾慎之輔投手(2年)に駆け寄った。「思い切って投げ込め」。投じた変化球は均衡を破られる犠飛となり、この1点で惜敗した。だがチームに最後まで「落ち着こう」などと声をかけ続けた。
井上捕手は昨秋に強肩を買われ、内野手から転向。打者の心理を読むことなどを求められるため、戸惑いもあったが乗り越えた。精神面も、部員たちと冬場の長距離走などで鍛えた。
この日は学校の後輩で放送部員の妹・亜未さん(2年)がスタンドで応援した。遠征や練習試合に同行し、球場で公式試合や大津商の練習試合のアナウンスをして兄を支えてきた。
妹に刺激を受けた井上捕手は朝、家族が思いをつづる「家族ノート」に「ムカツクときもあるけど、いつも放送で応援してくれてありがとう」と記していた。試合後、亜未さんは「直接言うのが恥ずかしかったと思う。慣れないポジションでよく頑張った」とねぎらった。
井上捕手は「投手陣はしっかり抑えてくれた。野球を通して何かに挑戦する大切さを学んだ」と振り返った。そして「妹たちのために勝って恩返ししたかった」と言葉を詰まらせた。(北川サイラ)